鉄分はからだに大切なミネラルで、からだから鉄分が足りなくなると「貧血」の症状がでます。顔色が青白い、フラフラめまいを起こしたり、前より疲れやすい。「貧血」ときくと、こんなイメージはないでしょうか?「私はそんな症状ないから貧血じゃないし」と思っているあなたも、自分では気づかない「隠れ貧血」かもしれません。今回は女性に多い貧血の原因と対処法をご紹介します。
この記事の目次
貧血のメカニズム
まず貧血についてのお話です。日本の女性の65%が貧血、というデータがあります。毎月の生理での出血で女性は血液や鉄分が失われて貧血になりやすいのです。また妊娠や出産時は鉄の量が妊娠前に比べて劇的に必要になったり、過度なダイエットなどで栄養が偏り鉄不足になってしまうこともあるのです。
ヘモグロビンという言葉を耳にしたことはありますか?
「人間の血液が赤いのはヘモグロビンが含まれているから」と学校で習って、今も覚えている人は多いかと思います。ヘモグロビンは血液を赤くしているタンパク質のことで、貧血は「ヘモグロビン」が不足して起こるからだの不調です。貧血=鉄不足は不妊の原因のひとつともいわれているほど、からだに必要なミネラルなのです。
ヘモグロビンと「貧血」の関係
血液の中は赤血球、白血球、血小板の3つの細胞からできています。赤血球は酸素を全身に運び、同時にいらなくなった二酸化炭素を回収してくれます。その赤血球の中のタンパク質のひとつがヘモグロビン(別名:血色素)で、ヘム(鉄)とグロビン(タンパク質)の2つの成分からできています。このヘム(鉄)は酸素を全身に届ける重要な働きをしています。そしてヘモグロビンが不足すると、貧血や鉄欠乏性貧血の症状がでてきます。
一般的な血液検査で貧血はわかります
血液検査でヘモグロビンが基準値より低い場合に「貧血」と診断されるます。しかし血液検査で貧血ではないと診断されても安心はできません。ヘモグロビンが正常でも、フェリチン(貯蔵鉄)不足で「隠れ貧血」の場合があるのです。
隠れ貧血は「フェリチン(貯蔵鉄)不足」が原因
「隠れ貧血」は最近メディアでも取り上げられるようになったので、耳にしたことがあるかもしれません。
一般的な血液検査では見過ごされてしまう「隠れ貧血」は「フェリチン(貯蔵鉄)」不足で起こるのです。
隠れ貧血とは
隠れ貧血は貧血ではありません。別名「潜在性鉄欠乏症」と呼ばれています。血液検査では、ヘモグロビンの数値で貧血かどうかを判断します。ヘモグロビン値が11g/dl以上の場合、ほどんどの女性は貧血と診断されません。「貧血気味で悩んでいるのに、血液検査のヘモグロビン値はなぜか正常・・・」という女性は少なくないのです。
そんなあなたは「フェリチン(貯蔵鉄)」が不足しているかもしれません。「フェリチン(貯蔵鉄)」も、ヘモグロビンと同じくらい貧血と密接な関係なのです。その「フェリチン(貯蔵鉄)」が足りない状態が「隠れ貧血」なのです。
※人間ドッグ学会において、女性のヘモグロビンの基準値は12.1~14.6g/dl(グラム・パー・デシリットル)となっています。
「フェリチン(貯蔵鉄)」とは
「フェリチン」とは鉄をストックする倉庫の役割で「貯蔵鉄」「第二の鉄」とも呼ばれています。
肝臓などに多く存在しているタンパク質のひとつで、鉄が多くなると倉庫であるフェリチン(貯蔵鉄)も増えて鉄を貯めてくれます。
「フェリチン不足」は「鉄不足」
さて、そんなフェリチン(貯蔵鉄)が減るとどんなことが起こるのでしょうか?
フェリチン(貯蔵鉄)の働きとして、まず貯めていた鉄を血液中に運んで鉄の量をキープして、鉄が必要な時はフェリチン(貯蔵鉄)でストックした鉄を放出して、それが減ると血液中の鉄を消費します。さらに血液中の鉄が減ると、ヘモグロビンの鉄も減っていくのです。
貧血はヘモグロビンが減ったときに症状がでます。しかしヘモグロビンが減って貧血になる前から「鉄不足」は始まっているのです。検査でヘモグロビンが基準値よりも低い人は、フェリチン(貯蔵鉄)の鉄も減っている状態なのです。逆に、鉄をストックするフェリチンは検査の対象にならないので、ヘモグロビンが正常値だと、貧血の診断は難しいところなのです。
フェリチン不足だとこんな症状がでます。
この症状がなくても、毎月生理のある女性は全員注意が必要です。
鉄が不足すると、脳内のセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質も不足するので、フェリチン「貯蔵鉄」が減ることで精神面への影響でうつ傾向になるなどの報告があります。
このような症状になる前に、鉄分は積極的にとりたい栄養素のひとつですね。
鉄を増やす効果的な「ヘム鉄」
鉄を増やす=フェリチン(貯蔵鉄)を増やしてあげましょう
まず鉄分が多い食べ物を食事に取り入れましょう。ただ、食事でとる鉄分よりも生理で失う鉄分の多い人は、食事を気をつけても鉄分が足りない状態です。鉄は吸収が悪い成分なので、むやみに鉄分の多そうな食材を口にしても、からだに吸収されず効果的ではありません。
食品に含まれる鉄には、肉や魚などの動物性食品に多い「ヘム鉄」と、野菜や穀物(大豆など)に多い「非ヘム鉄」があります。「ヘム鉄」を含む動物性食品のほうが、鉄の吸収率が高いことが一般的に知られています。
【ヘム鉄を含む食品】
レバー・牛肉赤身・カツオ・あさり・しじみ など
【非ヘム鉄を含む食品】
ひじき・ほうれん草・小松菜・大豆・卵黄 など
鉄不足を効果的に予防するためには、吸収性の高い「ヘム鉄」を含む食品をとることをおすすめします。サプリメントで補う場合には「ヘム鉄」配合のものを選びましょう。
鉄分と一緒にとりたい食べ物
貧血対策で鉄分と一緒に摂りたい食べ物として、“血をつくるビタミン“といわれている葉酸や「ビタミンB12」も大切です。葉酸は妊活女性だけのものじゃない! ~妊活男性にも必要な葉酸~ はこちら
【葉酸を含む食品】
レバー、ブロッコリー、たまご、いちご、アボカド
【ビタミンB12を含む食品】
しじみ、あさり、いわし等の魚介類全般、レバー
レバー、ほうれん草には鉄分、葉酸、ビタミンと三拍子そろった成分が含まれているので、貧血改善には効果的な食品です。またレバーには「若返りのビタミン」とも呼ばれているビタミンAが豊富なので、アンチエイジング効果も得られますよ!
鉄は汗と一緒に流れてしまいます
夏の暑さやスポーツなどで汗をかくとミネラルも一緒に流れていきます。鉄はからだに大切なミネラルのひとつで、他のミネラルと共に汗と一緒にからだから排出されてしまうのです。ヨガ・ジョギング・激しい運動・岩盤浴・サウナなどたくさんの汗をかく時にはいつもより多めの鉄分の補給が必要です。
貧血に効果のある漢方薬
【十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)】
疲労、衰弱している人の体力と気力を補う漢方薬です。
食欲不振、寝汗、貧血、皮膚の乾燥、疲れやすい、手足の冷えに効果的とされています。
【加味帰脾湯(かみきひとう)】
虚弱で血色が悪い人の不眠や貧血などに用いられる漢方薬です。
不眠、精神不安、抑うつ、貧血、食欲不振、倦怠感、疲れやすいからだに効果的とされています。
【当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)】
冷えをともなう婦人科系の症状や神経痛など広く使われる漢方薬です。
頭痛、めまい、肩こり、貧血、倦怠感、月経不順、腹痛、足腰の冷えやむくみに効果的とされています。
妊活中の女性にはもちろん、すべての女性に大切な鉄分
貧血の症状は、風邪や疲労などの症状とよく似ているので、勘違いされやすくそのまま見過ごされがちです。貧血にならないためには、鉄を貯めこんでくれる「フェリチン」を効率よく増やしましょう。もしヘモグロビン値が正常なのに、貧血のような症状が続く場合は、一度フェリチンの値を血液検査で調べてみてはいかがでしょうか?インターネットでフェリチンを検査してくれる医療機関を調べることができます。不調を感じたら早めに病院で受診しましょう。